純米一合冷やで

酒がうまい

能登誉 しろなまざけ

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石川県・輪島に行っていたので、朝市の通りにある酒屋さんに立ち寄って、この辺りの地酒をくださいと言って出してもらったのがこれ。輪島の酒蔵・清水酒造店の能登誉の活性にごり酒らしい。季節柄、生酒もいいなと思って購入、税込み1700円だった。

にごり酒自体そんなに飲まないので他との比較はできないけれど、透き通らない程度の白色でさらさらとは言えない感じの粘度がある。瓶を傾けると醪の粒が側面にびっしりついた。開封してみると、覚悟はしていたが噴水みたいなものすごい勢いで噴き出した。車で揺らしながら持って帰ってきたせいもあるかもしれないけど、1合ぐらい出てきたかも。下に敷いた鍋に受け止めて事なきを得た。

飲んでみると、すごく甘みがあって飲みやすい。かといってしつこいわけではなく、炭酸とともに切れていく感じがいい。14度を感じさせない飲みやすさでスイスイ行けるなあ。酒屋さんのおばさんが「私も昨日の夜、1本あけちゃったのよ〜」と言ってたけど、よく分かる。

こういうお酒は味がしっかりしているのでツマミは本来いらないのかもだけど、今日は輪島で買った「海女小屋のたら子唐墨」と新潟・長岡市で作っている「甘口つまみ鱈」を用意してみた。日本海側で「タラ」と言えば今では標準和名マダラのことを普通は言う。しかしこの2つの商品はスケトウダラが原料である。スケトウダラはかつて本州日本海沿岸、特に新潟以南でも漁獲された時期があったが、現在はほとんど水揚げされていない。で、産地を見てみるとやはりどちらも地物ではなく北海道産だった。

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最近仕事で、特に底魚関係の水産流通や加工業の人と話すことがある。その人たち曰く、「地元原料を使って加工業をする」というのは表面上聞こえはいいが、やっぱり商売として成り立たせるには相当な困難があるとのことだった。我々素人は産地市場に並んでいる水産物を見て「すごい量だなあ」と思うわけだけど、単純にせり単価と一般的な原価率から概算しても、1つの小規模な工場すら存続させるにはまったく不十分なことに気づく。加工業を成り立たせるためには我々が想像する以上の原料が必要で、しかし一方で一地方の水揚げ物に頼っていると不漁や時化の影響を大きく受けてしまって安定した仕入れが往々にして成り立たない。特に日本海側の小規模沿岸漁業が主体となっている地域はその傾向が強いように感じる。だから、結局1年間の操業スケジュールを安定させるためには、海外や遠く離れた地域の原料を流通コストをかけてでも規定量仕入れた方が健全になるらしい。

ツマミに話を戻すと、特に前者は輪島の地物をうたった工房のラインナップなので、このことを強く感じる。でも、これは地物じゃないから悪いとか、漁業者や加工業者のどちらかが悪いとかいう話ではまったくない。加工に回せない地物が実は結構あることが予見されるので、このような良い加工技術を持つところが地物をうまく加工ラインに組み込んで、地域のうまいものが消費者に届く仕組みができたらいいのになと一人の酒飲みとして思う。